「先に発注してしまったのですが、補助金は使えますか」——これは、実際にいただくご相談の中でも対処が難しいものの一つです。
結論から書きます。交付決定より前に発注・契約・支払いをした費用は、補助の対象外です。後から申請しても、その分は補助されません。
この記事では、どこからが「発注」にあたるのか、気づいたときに何ができるのか、そして次から防ぐ方法を整理します。
なぜ対象外になるのか
この補助金は、「これから行う投資」を支援する制度です。すでに実行された投資は支援の対象になりません。
そのため、交付決定という「実施してよい」という通知が出る前に発注してしまうと、制度上は「補助金がなくても実行した投資」とみなされます。厳しく感じられるかもしれませんが、制度の趣旨からくる決まりです。
どこからが「発注」にあたるか
| 行為 | 扱い |
|---|---|
| 相見積もりを取る/見積書を受け取る | 問題なし |
| 無償の体験版を試す | 問題なし(自動で有償に切り替わる契約は要注意) |
| 社内で稟議を通す | 問題なし |
| 注文書を出す | 発注にあたる |
| 契約書を交わす | 発注にあたる |
| 申込フォームを送信する | 発注にあたる |
| 支払う(前金・一部を含む) | 発注にあたる |
見積を取ることと、発注することは別です。ここを混同して「見積も取れないのか」と動きを止めてしまう方がいますが、比較検討は交付決定前に済ませておくべき作業です。
実際に起きやすい5つのケース
1. サブスクリプションを先に申し込んでしまった
クレジットカードで手軽に申し込めるため、いちばん起きやすいケースです。申込と同時に課金が始まるサービスは、その時点で支払いが発生しています。
2. 体験版から自動で有償に切り替わった
期限切れとともに課金が始まる契約形態です。試すつもりだったのに支払いが発生していた、という状態になります。申込前に切り替えの条件を確認してください。
3. PCを先に買ってしまった
CADより先にPCを手配するケースです。ただし通常枠ではハードウェアは原則として補助対象外なので、そもそも補助の対象ではありません。この場合は影響がないこともあります。
4. 販売店の「キャンペーンが終わる」で急いだ
期限を理由に発注を急がせる話には注意してください。補助金のスケジュールと販売キャンペーンは別物です。
5. 年度末・決算期に合わせて先に処理した
社内の都合で発注日を前倒しするケースです。会計上の都合と補助金の要件は別なので、両方を満たす日程を先に組む必要があります。
気づいたときにできること
状況によりますが、選択肢は次のとおりです。
| 状況 | できること |
|---|---|
| 発注したが、まだ契約を解除できる | 解除し、交付決定後に改めて発注する(相手先との調整が必要) |
| 発注済みの分と、これから買う分がある | これから買う分だけで申請する。ただし補助額が下限の5万円を下回ると申請できない |
| 全て発注済み | 今回は補助金を使わない。次回の導入・追加ライセンスで活用する |
やってはいけないのは、発注日や契約日を実態と違う日付にすることです。実績報告では発注書・契約書・支払いの証憑を提出します。日付の辻褄が合わなければ分かりますし、不正とみなされます。
気づいた時点で、支援事業者に正直にご相談ください。隠したまま申請するより、対処の選択肢が残ります。
次から防ぐ:スケジュールの引き方
| 順 | やること | やってよいこと/いけないこと |
|---|---|---|
| 1 | 課題を整理し、構成を検討する | 体験版OK |
| 2 | 相見積もりを取る | 見積までOK |
| 3 | 社内で稟議を通す | OK |
| 4 | GビズIDプライムを取得する | OK(未取得なら早めに) |
| 5 | 交付申請する | ― |
| 6 | 交付決定 | ― |
| 7 | 発注・契約・支払い | ここから |
| 8 | 導入・設定・研修 | ― |
| 9 | 実績報告 → 確定検査 → 交付 | ― |
押さえるべきは6と7の間に線があることだけです。
導入時期が決まっている場合は、そこから逆算してどの締切に申請するかを決めます。締切日と交付決定の予定日は事務局が公表していますので、申請前に必ず確認してください。
あわせて知っておいていただきたいこと
補助金は精算払いです。交付決定の後にお客様が導入費用を全額お支払いになり、実績報告と確定検査を経てから補助金が交付されます。導入時点では全額の資金が必要になるため、資金計画にはこの前提を入れておいてください。
稟議を上げる段階でこの2点(審査があること、精算払いであること)を書いておくと、後の差し戻しが減ります。書き方はCAD導入の稟議書はどう書くか|投資対効果の示し方と記入例にまとめています。
相見積もりを取るタイミングはCADの相見積もりの取り方|何社から、どこを比べるか、制度の全体像はデジタル化・AI導入補助金|CADの導入費用はどこまで下がるかをご覧ください。
よくある質問
見積書をもらっただけでも発注になりますか
見積を受け取る行為自体は発注ではありません。問題になるのは、注文書を出す、契約書を交わす、申込フォームを送信する、支払うといった、取引を確定させる行為です。ただし判断が分かれる場面もあるため、交付決定前に何かを確定させそうな場合は、事前に支援事業者か事務局に確認してください。
体験版を使い始めるのは問題ありませんか
無償の体験版を試すことは、費用が発生しないため通常は問題になりません。注意が必要なのは、体験版から有償版へ自動的に切り替わる契約形態や、申込と同時に課金が始まるサービスです。切り替えのタイミングと課金の発生時期を、申込前に必ず確認してください。
交付決定前に払ってしまった分だけを外して申請できますか
構成の一部を外して申請すること自体は可能な場合があります。ただし、外した結果として補助額が下限の5万円を下回ると申請できません。また申請内容と実際の導入内容が食い違うと、実績報告の段階で問題になります。気づいた時点で支援事業者にご相談ください。
交付決定まではどのくらいかかりますか
回によって異なります。締切日と交付決定の予定日は事務局が公表していますので、申請前に必ず確認してください。導入時期が決まっている場合は、そこから逆算してどの締切に間に合わせるかを決めることになります。
交付決定後に必要になる実績報告の書類と期限は補助金の実績報告で必要な書類|CADを導入した場合の実務をご覧ください。
まとめ
交付決定より前の発注・契約・支払いは、補助の対象外です。見積を取ることは問題ありませんが、注文書・契約書・申込フォームの送信・支払いは発注にあたります。
もう発注してしまった場合も、これから買う分だけで申請できることがあります。日付を実態と違うものにすることだけは絶対に避けて、気づいた時点でご相談ください。
次から防ぐには、交付決定と発注の間に線を引いたスケジュールを最初に作っておくことです。それだけで防げます。
CADジャンクションの導入支援について
CADジャンクションは、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)のIT導入支援事業者として、CADの選定から導入・定着までをご支援しています。
補助金を活用する場合、交付申請はお客様ご自身のGビズIDで行っていただく必要があります。当社は、対象となるITツールのご提案、必要書類のご案内、申請手順のご説明、導入後の設定・研修までを伴走支援します。
補助額は申請枠・事業者規模・補助対象経費によって変わります。通常枠の場合、補助率は原則1/2(補助上限450万円)です。審査があり、採択を保証するものではありません。
制度内容は変更される場合があります。最新の要件・補助率・締切はデジタル化・AI導入補助金 事務局の公式サイトで必ずご確認ください。