店舗の設計は、扱う範囲が広いわりに1件あたりの期間が短い仕事です。内装、什器、厨房、サイン、設備。これを1つのCADで全部やろうとすると、どこかが必ず中途半端になります。
この記事では、店舗設計で発生する作図をどう分担するかを整理し、それぞれに向く製品を公表価格つきで比較します。
結論:3つに分けて考える
| 範囲 | 求められること | 担当させる道具 |
|---|---|---|
| 内装(軸) | 平面・展開図・天井伏図、そして提案用の3D | 内装向け3D CAD。ここを主役にする |
| 什器 | 製作図、寸法の精度、発注できる図面 | 同じCADで描く。精度が要るので2Dの作図性が効く |
| 厨房 | 機器の配置、排気・給排水の取り合い、動線 | 機器メーカーの図面データを取り込む。専用ソフトは案件比率次第 |
軸は内装です。什器と厨房は内装図の上に載る情報なので、内装CADで扱える範囲を先に決め、足りない部分だけ補うのが順序になります。
店舗設計のCADに求められる3つの条件
1. 提案が通る3Dが速く作れること
店舗設計では、施主が図面を読めないことが普通です。平面図を見せても決まらず、3Dを見せると決まる。しかも案件の期間が短いため、作り込みより速さが効きます。
判断の基準は「初回提案までに何時間かかるか」です。体験版で自社の直近案件を1件、実際に起こしてみるのが確実です。
2. 既存図がない現場に対応できること
テナント区画の図面が古い、実際と違う、そもそも無い。改修を伴う店舗設計では珍しくありません。現地で測った寸法から素早く下図を起こせるかが、実務では効いてきます。
3. 什器の製作図まで出せること
提案用の3Dだけでは仕事が終わりません。什器を発注するには、寸法が正確な2D図面が要ります。3D表現は得意だが2Dの作図性が弱い製品を選ぶと、ここで別のCADが必要になります。
候補になる製品の比較
公表価格は各社が自社サイトで公開している金額です(2026年9月15日確認)。当社のご提案価格ではありません。
| 製品 | 向く範囲 | 公表価格 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| Vectorworks Design Suite | 内装・什器・3D提案 | 676,500円 税込・買切り | 2Dの作図性と3D表現が両立する。什器の製作図まで1本で出せる |
| Vectorworks Fundamentals | 内装・3D提案 | 393,800円 税込・買切り | まず3D提案から始めるならこの位置 |
| SketchUp Pro | 3D提案・ボリューム検討 | 85,830円/年 税抜 | 提案スピードが速い。ただし2Dの作図性は補う必要がある |
| 3Dインテリア デザイナーNeo | 内装プレゼン | 96,800円 税込・買切り | 価格が抑えめ。提案用途に絞るなら入りやすい |
| COOHOM | 内装プレゼン(クラウド) | 12,000円/月 年間請求 | ブラウザで動く。端末を選ばず、複数人で共有しやすい |
| AutoCAD | 什器製作図・2D全般 | 84,700円/年 税抜 | DWGの原本を扱える。什器業者とのやり取りが多いなら |
Vectorworksについて:メーカーのベクターワークスジャパン(旧:エーアンドエー)は、スタンドアロン版の永続ライセンスの販売を2026年末で終了すると発表しています(2026年4月15日発表)。2027年以降は、サブスクリプション(年間・月間)またはネットワーク版の永続ライセンスでの提供になります。買い切りでの購入をご検討の場合は、時期にご注意ください。
より多くの製品を条件で絞り込む場合はCAD製品データベース(53製品)をご利用ください。用途に「内装」を指定すると該当製品だけが残ります。
組み合わせの現実解
| 会社の形 | 組み合わせ | 考え方 |
|---|---|---|
| 設計だけを請け、施工は外注 | 内装3D CAD 1本 | 提案が通ることが最優先。什器図は外注先の様式に合わせる |
| 設計施工を一貫で請ける | 内装3D CAD + 汎用2D CAD | 提案と製作図で求められる精度が違うため、分けたほうが速い |
| 飲食店の比率が高い | 内装3D CAD + 厨房機器の図面データ | 厨房専用ソフトは、飲食が案件の半分を超えてから検討でよい |
「全部できる1本」を探すより、2本に分けたほうが安く早く済むことが多いのがこの分野の特徴です。内装に絞った選び方は内装CADとは?内装CADを使うメリットとおすすめの内装CAD、外構までを含む場合は外構CADとは?外構CADのメリットとおすすめの外構CADをご覧ください。
導入で失敗する2つのパターン
提案用の見た目だけで選んでしまう
3Dパースの美しさで選び、什器の製作図を出す段になって2Dの作図性が足りないと気づくパターンです。提案から発注までを1件通してみることで事前に分かります。
什器業者・厨房業者が開けない形式で渡していた
自社の環境だけで判断すると、相手が開けない形式で渡すことになります。実際に取引している業者が何を使っているかを先に確認してください。多くの場合、DWGかDXFでの受け渡しになります。形式ごとの性格はCADのファイル形式「DXFファイル」とは?CADでの利用方法と対応ソフトを解説で整理しています。
費用と補助金
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の通常枠では、事務局に登録されたITツールのソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)・導入関連費が補助対象になります。補助率は原則1/2、補助額は下限5万円・上限450万円です。
押さえておく点は3つです。
- 対象は登録されたITツールに限られます。検討中の製品名をお知らせいただければ、取扱いと登録の可否を確認してご案内します。
- ハードウェアは通常枠では原則対象外です。3Dを扱うPCは別予算で考えてください。
- 交付決定前の発注・契約・支払いは対象外です。
価格の相場はCADの値段と費用|種類別の価格相場と総額の内訳をご覧ください。
よくある質問
店舗設計に専用のCADはありますか
店舗設計だけを対象にした専用CADは多くありません。実務では、内装向けの3D CADを軸にして、厨房や什器は専用ソフトまたは作図で補う組み合わせが一般的です。ひとつの製品ですべてを賄おうとすると、どこかが中途半端になります。
提案用のパースはCADで作れますか、別のソフトが要りますか
簡易なパースであればCADの標準機能で作れます。仕上がりを重視するなら、CADで作ったモデルをレンダリングソフトに渡す形になります。まずCADの標準機能で試し、提案が通らない理由が見た目にあると分かってから追加を検討するのが無駄がありません。
厨房のレイアウトはどう描けばよいですか
厨房機器メーカーが提供する図面データを取り込んで配置するのが基本です。機器の寸法だけでなく、排気・給排水の取り合いと、作業動線に必要な離隔を押さえる必要があります。厨房に特化したソフトもありますが、飲食店の案件比率が高くない限り、汎用の内装CADに機器図を取り込む方法で足ります。
店舗設計のCAD導入に補助金は使えますか
デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の通常枠で、事務局に登録されたITツールのソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)が補助対象になり得ます。補助率は原則1/2、補助額は下限5万円・上限450万円です。検討中の製品名をお知らせいただければ、取扱いと登録の可否を確認してご案内します。なお審査があり、採択を保証するものではありません。
まとめ
店舗設計のCADは、内装を軸にして、什器と厨房を足すという順序で考えると決めやすくなります。1本で全部を賄おうとすると、提案の速さか製作図の精度のどちらかを諦めることになります。
選ぶときに見るのは、初回提案までにかかる時間、既存図がない現場への対応、そして什器の製作図が出せるかの3点です。判断は体験版で自社の直近案件を1件通してみるのが確実です。
CADジャンクションの導入支援について
CADジャンクションは、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)のIT導入支援事業者として、CADの選定から導入・定着までをご支援しています。
補助金を活用する場合、交付申請はお客様ご自身のGビズIDで行っていただく必要があります。当社は、対象となるITツールのご提案、必要書類のご案内、申請手順のご説明、導入後の設定・研修までを伴走支援します。
補助額は申請枠・事業者規模・補助対象経費によって変わります。通常枠の場合、補助率は原則1/2(補助上限450万円)です。審査があり、採択を保証するものではありません。
制度内容は変更される場合があります。最新の要件・補助率・締切はデジタル化・AI導入補助金 事務局の公式サイトで必ずご確認ください。