CAD導入の稟議書はどう書くか|投資対効果の示し方と記入例

CADを入れたいと決めたあと、多くの会社がここで止まります。金額の根拠と、効果の説明が書けないからです。

この記事は、CAD導入の稟議書に何を書けばよいかを、項目ごとに整理したものです。費用対効果の計算方法と、そのまま使える書き方の例まで載せています。

稟議書に必要なのは6項目です

項目書くこと決裁者が見ているところ
① 現状の課題いま何に時間がかかっているか。数字で思いつきではないか
② 導入するもの製品名、ライセンス本数、形態何をいくつ買うのか
③ 費用初年度と3年総額。保守・PC・教育も含める後から追加が出ないか
④ 効果削減時間 × 時間単価 × 人数費用に見合うか
⑤ 比較検討他候補と、選んだ理由比べたうえで決めたか
⑥ 導入時期いつ発注し、いつ使い始めるか期をまたがないか

差し戻される理由のほとんどは③と④です。③は「あとから追加費用が出ないか」、④は「その数字の根拠は何か」を見られています。

③費用:3年分を並べる

初年度だけを書くと、2年目以降に「聞いていない」と言われます。次の形で並べてください。

費目初年度2年目3年目
ソフトウェア◯◯円◯◯円◯◯円
年間保守◯◯円◯◯円◯◯円
PC・周辺機器◯◯円――
教育・研修◯◯円――
合計◯◯円◯◯円◯◯円

見落とされやすいのはPCと教育です。3DやBIMを扱うならグラフィックボードを積んだPCが要りますし、2Dから3Dへ移る場合は慣れるまで一時的に生産性が落ちます。ここを書いておくと、導入後に「話が違う」と言われません。

買切りとサブスクリプションで総額がどう変わるかはCADライセンスは買い切りかサブスクか|判断の3基準、費用の内訳はCADの導入コストはどのくらいか|内訳と抑える方法にまとめています。

④効果:時間単価から逆算する

計算はこれだけです。

年間効果額 = 削減できる時間(月)× 12か月 × 時間単価 × 対象人数

記入例です。

項目値根拠
対象作業図面からの数量拾い出し月次で発生
現状の所要時間月20時間1か月実測
削減見込み月10時間体験版で同じ作業を試した結果
時間単価3,000円人件費から算出
対象人数2名同時に使う人数
年間効果額720,000円10h × 12 × 3,000 × 2

「現状の所要時間」を実測で出すことが、この表のすべてです。感覚で書いた数字は必ず突っ込まれますし、実測すると想定の半分だったり倍だったりします。1か月でよいので記録を取ってから書いてください。

削減時間の根拠は、体験版で実際に同じ作業をやってみるのが最も強い材料になります。カタログの「◯%削減」を引用するより説得力があります。

⑤比較検討:3製品を同じ軸で並べる

「なぜこれを選んだか」を示す欄です。候補を3つ、同じ軸で並べます。

比較軸A案B案C案
3年総額金額を並べる
取引先の形式に対応できるか実際に図面を開いて確認した結果
既存図面が開けるか同上
教育にかかる時間操作を覚えるまでの想定
補助金の対象になるか登録ITツールかどうか

製品ごとの公表価格と対応形式はCAD製品データベース(53製品)で確認できます。価格の相場観はCADの値段と費用|種類別の価格相場と総額の内訳をご覧ください。

補助金を使う場合、稟議に必ず書くこと

補助金前提で稟議を上げるなら、次の2行を入れておいてください。これを書かずに通すと、資金繰りの段階で差し戻されます。

  1. 審査があり、採択されない可能性がある。不採択の場合に導入するかどうかも書いておく
  2. 補助金は精算払いのため、導入時にいったん全額を支払う必要がある。入金は実績報告と確定検査の後

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の通常枠は、補助率が原則1/2、補助額の下限5万円・上限450万円です。ハードウェアは通常枠では原則対象外のため、PC代は補助の対象外として計上してください。

制度の全体像はデジタル化・AI導入補助金|CADの導入費用はどこまで下がるか、会計上の扱いはCADソフトの勘定科目とは?CADの会計処理の方法を解説にまとめています。

差し戻されやすい3つのパターン

初年度の金額しか書いていない

サブスクリプションは毎年発生します。買切りでも保守が続きます。3年総額を並べるだけで、この指摘は消えます。

効果が「効率化」としか書いていない

決裁者が見たいのは金額です。時間×単価×人数まで落としてください。

比較した形跡がない

1製品だけ挙げると「なぜそれなのか」を必ず聞かれます。3つ並べて、落とした理由を1行ずつ書いておけば済みます。

よくある質問

稟議書に書く金額は、見積の総額でよいですか

初年度の支出額と、複数年の総額の両方を書いてください。サブスクリプションは初年度だけを書くと安く見え、2年目以降に「聞いていない」と言われます。買切りの場合も年間保守が続くため、3年分の総額を並べるのが安全です。

補助金を使う前提で稟議を上げてもよいですか

上げて構いませんが、2点を明記してください。ひとつは審査があり採択を保証できないこと。もうひとつは補助金が精算払いで、導入時にはいったん全額を支払う必要があることです。この2点を書かずに通すと、資金繰りの段階で差し戻されます。

効果を数字で出せないときはどうすればよいですか

1か月でよいので実測してください。対象の作業に週何時間かかっているかを記録するだけで、根拠のある数字になります。実測が難しい場合は「削減できる想定時間」と明記し、前提条件を併記してください。推測を確定値のように書くと、達成できなかったときに次の投資が通らなくなります。

複数の製品で迷っている段階でも稟議は書けますか

書けます。その場合は1製品に絞らず、比較表と「なぜこの候補に絞ったか」を示し、最終決定は見積取得後とする形にします。むしろ相見積もりを取ること自体を稟議に含めたほうが、決裁者にとっては納得しやすくなります。

補助金を受け取ったあとの会計処理は補助金でCADを導入したときの会計処理|圧縮記帳の考え方をご覧ください。

まとめ

CAD導入の稟議書は、6項目を埋めれば形になります。差し戻される原因は費用を初年度分しか書いていないことと効果を金額に落とせていないことのほぼ2つです。

費用は3年総額で、PC・教育まで含めて。効果は削減時間×時間単価×人数で。そして削減時間は、1か月でよいので実測してから書く。この3点を押さえれば、根拠のある稟議書になります。

補助金を使う場合は、審査があることと精算払いであることの2行を忘れずに入れてください。

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