建設業のCAD選び|施工管理で失敗しない進め方

現場に出ている人ほど、CADへの不満は具体的です。「開くのに時間がかかる」「協力会社に送ったら文字が化けた」「先週もらった図面と寸法が違う」。設計部門が語るCADの悩みとは、そもそも種類が違います。

施工側にとってCADは、図面を一から描く道具というより、受け取った図面を確実に読み、必要な部分だけ加工し、関係者に間違いなく渡すための道具です。ところが世に出回るCADの情報は設計者向けが多く、機能一覧を見比べても「うちの現場で使えるか」には答えが出ません。

この記事では施工・現場側の立場に絞って、つまずきの正体、選定時の三つの基準、無理のない導入手順を整理します。

補助金の対象になるか、先に確かめる

デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の通常枠は、補助率が原則1/2(補助上限450万円)です。当社はIT導入支援事業者として、対象になるツールのご提案と必要書類のご案内を行っています。交付申請はお客様ご自身のGビズIDで行っていただきます。審査があり、採択を保証するものではありません。

施工側がCADで困るのは「描く機能」ではない

設計変更が現場の手元まで届かない

施工中の設計変更は避けられません。問題は変更そのものではなく、変更が現場に届くまでの経路が人に依存していることです。設計事務所から工務担当へメールで届き、印刷して現場に持ち込み、職長が旧図と差し替える。この経路のどこか一箇所で止まれば、古い図面のまま施工が進みます。厄介なのは、止まったことに誰も気づかない点です。

紙とデータの二重管理

どれが正しい図面かを判断できるのが特定の一人だけ、という状態は珍しくありません。現場事務所には紙の図面があり、サーバーにはデータがあり、担当者のPCには「最新_修正2」というファイルもある。紙が悪いのではなく、更新のタイミングがずれ、どちらが基準か決まっていないことが問題になります。この構造と止め方は図面のバージョン管理の方法|最新版が分からないを終わらせるで詳しく扱っています。

協力会社とのやり取りで形式が揃わない

躯体、設備、内装、それぞれの協力会社が使うCADはばらばらです。こちらがDWGで送っても相手はPDFしか開けない。返ってきたデータは線が見えても寸法値が消えている。こうした形式のずれの吸収に、工務担当の時間が削られていきます。

設計用CADと施工で使うCADは、求められ方が違う

同じ「CAD」でも、設計部門と施工側では期待される役割が異なります。ここを混同したまま選ぶと、高機能だが現場で誰も触らないソフトを買うことになります。

観点設計部門で重視されること施工側で重視されること
主な作業一から作図する、検討案を複数作る受け取った図面を読む、部分的に加筆・朱書きする
ファイルの扱い自社が原本を持つ他社から受け取ったものを扱う場面が多い
使う場所事務所のデスク現場事務所、詰所、屋外、移動中
使う人の幅設計担当者に限られる現場責任者、職長、協力会社まで広がる
教育にかけられる時間まとまった時間を取りやすい業務の合間の細切れ時間しか取れない

施工側では「使う人の幅が広く、教育時間が取りにくい」という条件が最初から決まっています。作図機能の豊富さより、触れる人が増えるかどうかが効いてきます。

施工側がCADを選ぶときの3基準

基準1:受け取るデータ形式に対応できるか

自社が描く形式ではなく、他社から届く形式に合わせる。これが施工側の出発点になります。

確認したいのは、拡張子が対応表に載っているかではなく、開いた結果が実務に耐えるかどうかです。バージョン違い、レイヤ構成の保持、文字・寸法の表示、外部参照の扱いが要点になります。公共工事を扱うなら、電子納品で使われる形式への対応可否も早めに確認したいところです。判断を早めるには、実際に受け取っている図面を体験版でそのまま開くのが確実です。形式ごとの性格はCADのファイル形式「DXFファイル」とは?CADでの利用方法と対応ソフトを解説で整理しています。

確認の順序としては、まず自社が実際に受け取っている図面を1枚選び、候補製品の体験版でそのまま開いてみるのが最短です。カタログの対応形式一覧を見比べるより、1枚開いたほうが早く分かります。

このとき見るのは、開けたかどうかではなく、レイヤ構成が保持されているか/文字と寸法が正しく表示されるか/外部参照が切れていないかの3点です。

基準2:現場で開けるか

事務所のデスクトップでしか開けないCADは、施工側では価値が半減します。現場で図面を見たい場面は、多くが立ったままの数十秒です。

見るべきは、現場の端末で動くか、電波が届かない場所でも開けるか、ライセンスが端末固定か人単位で持ち運べるか、といった運用条件になります。容量の大きい図面の表示速度も実機で確かめたいところです。

基準3:協力会社が使えるか

自社が高機能なCADを持っていても、相手が開けなければ意味がありません。協力会社にソフトの購入を求めるのは現実的でないことが多いものです。無償の閲覧用ツールがあるか、閲覧専用の安価なライセンスがあるか、PDFなど広く開ける形式に確実に書き出せるかを確認します。「相手に合わせて形式を落とす」ことを前提に選ぶ考え方です。

基準確認する相手確認方法の一例
データ形式への対応発注者・設計事務所実際に受け取った図面を体験版で開く
現場で開けるか自社の現場担当現場で使う端末に入れ、屋外で開いてみる
協力会社が使えるか主要な協力会社普段使うソフトと開ける形式を聞き取る

三つとも、カタログではなく相手に確認する項目である点が共通しています。

導入でつまずくのは、機能ではなく前提条件

現場のITリテラシーの幅

PCを日常的に使う工務担当と、必要なときだけ触る職長では前提が違います。全員に同じ操作を求めると、結局は一部の人だけが使う状態に戻ります。閲覧だけの人、朱書きまでする人、作図・修正までする人。この三層に分け、役割ごとの到達点を決めておくと無理がありません。

通信環境

現場は必ずしも電波が安定していません。クラウド前提の仕組みは、通信が切れた瞬間に図面が見られなくなります。オフラインでも開けるか、後から同期できるかは、導入前に現場で試しておきたいところです。

教育時間の確保

現場はまとまった研修時間を取りにくい環境です。何時間必要かではなく、最初に覚える操作をどこまで絞れるかを考えたいところです。開く、拡大する、距離を測る、朱書きする、保存して送る。まずはこの範囲に限定し、それ以外を後回しにするほうが定着しやすくなります。

段階的な進め方

一度に全社導入しようとすると途中で止まります。次の順序なら各段階で判断材料が残ります。

段階やること判断すること
第1段階受け取る図面の形式と送り先の状況を棚卸しするどの形式への対応が必須か
第2段階一つの現場、数名に限定して試す現場の端末と通信環境で実用に足るか
第3段階閲覧・朱書き・作図の役割分担を決める誰にどのライセンスが必要か
第4段階協力会社への渡し方のルールを文書化する形式変換の手間が減ったか
第5段階対象現場を広げ、社内の標準手順にする運用が特定の担当者に依存していないか

第2段階で止まる会社が多く見られます。理由の大半は製品ではなく、試す現場の選び方にあります。工期に余裕がなく変更の多い現場を選ぶと、検証どころではなくなります。

当社が導入支援の初回ヒアリングで実際によく伺うのは、業種を問わず次の3つです。

  1. 特定の担当者しかファイルを開けない
  2. データが複数の場所に散らばり、どれが最新か分からなくなっている
  3. 変更履歴が追えない

施工側では、ここに「協力会社が開けない」「現場で開けない」が加わります。社内の3つを解決しないまま外向きの対応だけ整えても、結局は最新版がどれか分からないまま外に出ていくことになります。 順序としては、社内の置き場所を一箇所に決めることが先です。

詳しくはCADの属人化を解消する手順と、人が抜けても回る体制をご覧ください。

よくある質問

施工側でも自社でCADを持つべきですか。ビューアだけでは足りませんか

見るだけならビューアで足ります。ただし寸法を追記する、施工図に朱書きして戻す、部分的に切り出して渡すといった作業があるなら編集できる環境が要ります。まず自社の作業を書き出し、閲覧で済むものと編集が要るものを分けるのが先です。

DWGとSXF、どちらに対応していれば十分ですか

扱う案件によって変わります。民間工事が中心ならDWG/DXFのやり取りが多く、公共工事で電子納品が求められる案件ではSXF系への対応が関わります。両方が混在するなら、直近1年に受け取った図面の形式を数え、多い方から優先してください。なお、建築分野でBIMの活用を検討している場合は建築BIM加速化事業とは?概要から手続きの方法まで徹底解説!もあわせてご覧ください。

現場のタブレットで図面を見るには何が必要ですか

端末のスペック、対応アプリの有無、図面データを端末に届ける手段の三つが揃う必要があります。見落とされやすいのは三つ目で、メール添付での運用は版の管理ができなくなります。共有フォルダやクラウドを使う場合も、オフライン時にどう見るかを決めておいてください。

協力会社に図面を渡すとき、どの形式が無難ですか

相手が編集しないならPDFが開ける範囲が広く、トラブルが少ない選択です。相手が加工する場合は、事前にソフトと対応形式を聞き取り、変換後のデータを一度自社で開いて崩れがないか確認してから送ります。「送って終わり」にしないことが要点です。

教育にどれくらいの時間を見ておけばよいですか

必要な時間は役割と習熟度で大きく変わるため、一律の目安は示せません。ただ、最初に覚える操作を絞るほど短くなるのは共通しています。閲覧と朱書きに限定する層と、作図・修正まで行う層を分け、前者から始めると全体の負担を抑えられます。

当社の場合、お客様は中小企業がほとんどのため、研修は対面を中心に実施しています。 20名程度の規模であれば役割別に細かく分けることはせず、業務に関わる方に広く同じ内容をお伝えする形を取っています。実施ペースは月2回程度を2〜3か月が一般的です。

役割で分けないのは、少人数の現場では担当が固定されないためです。「閲覧だけの人」が翌週には朱書きをしている、ということが普通に起きます。分けるより、全員が同じ最低限を持っているほうが現場は回ります。

一度の説明会で全員が使えるようになることは、まずありません。実際に触って出てきた疑問に答える機会を、間を置いて複数回持つ必要があります。

まとめ

施工側のCAD選定は、機能比較表の勝敗では決まりません。受け取る形式に対応できるか、現場で開けるか、協力会社が使えるか。導入は一つの現場から、閲覧と朱書きに絞って始めるほうが結果的に早く定着します。

CADジャンクションの導入支援について

補助金を活用する場合、交付申請はお客様ご自身のGビズIDで行っていただく必要があります。当社は、対象となるITツールのご提案、必要書類のご案内、申請手順のご説明、導入後の設定・研修までを伴走支援します。

補助額は申請枠・事業者規模・補助対象経費によって変わります。通常枠の場合、補助率は原則1/2(補助上限450万円)です。審査があり、採択を保証するものではありません。

制度内容は変更される場合があります。最新の要件・補助率・締切はデジタル化・AI導入補助金 事務局の公式サイトで必ずご確認ください。

この記事を読んだうえで、次に決めることがあれば

導入したい製品と使用人数をお知らせいただければ、お見積りと、補助金の対象になるかの確認結果をお返しします。製品が決まっていない段階のご相談も承ります。初回のご相談は無料です。

公共工事で電子納品が求められる場合は、SXFへの変換方法|電子納品で弾かれないための手順をご覧ください。

協力会社とのやり取りで文字が崩れる場合は、DXFの文字化けを直す|原因5つと対処の順番をご覧ください。

改修工事での図面の起こし方は、リフォーム・改修で使うCAD|既存図がない現場の進め方をご覧ください。