電気図面をCADで作る手順|施工図と図記号の基本

電気工事の図面をCADで描くとき、手が止まりやすいのは操作方法ではありません。どの順番で、何を決めながら描き進めるかがはっきりしていないときです。

この記事では、電気設備の施工図をCADで作る流れを工程ごとに整理します。あわせて、図記号の扱い、レイヤの分け方、そして手戻りにつながりやすい箇所をまとめました。

なおどのCADを選ぶかについては電気CADの選び方|電気工事・電気設備で使うソフトを比較で扱っています。この記事は製品が決まっている前提で、実際に図面を作る手順に絞っています。

全体の流れ:7つの工程

工程やることこの工程で決まること
1. 条件の確認図面リスト、縮尺、レイヤ規約、凡例、提出形式を受け取る以降のすべての前提
2. 下図の取り込み建築図を外部参照で読み込み、通り芯と階高を確認変更が入ったときの直しやすさ
3. 機器の配置分電盤、照明、コンセント、スイッチ、弱電機器を配置図面の骨格
4. 配線の記入回路ごとに配線を引き、電線の種類と条数を記入施工の可否
5. 盤の結線分電盤の系統図・結線図を作成現場での結線作業
6. 数量の拾い出し電線・器具・盤の数量を集計見積と発注
7. 検図・提出整合確認、指定形式で書き出し手戻りの有無

工程1を飛ばすと、後半で必ず戻されます。縮尺やレイヤ規約が指定と違っていた場合、直す範囲が図面全体に及ぶためです。着手前の30分が、あとの数日を左右します。

工程1:着手前に確認する5項目

元請や設計事務所から受け取っておくものです。口頭ではなく、書面かデータで残してください。

  • 図面リストと縮尺:どの図面を、どの縮尺で出すのか
  • レイヤ規約:指定がある場合は必ず従う。名称と色の両方
  • 凡例表:使う図記号。独自記号が含まれることがある
  • 提出形式:DWG/DXF/JWW/SXF/PDF。バージョン指定の有無も
  • 建築図の最新版:どれが最新かを明確にしてもらう

最後の項目は見落とされがちですが、古い建築図をもとに描き進めてしまう事故が実際に起きます。受け取った日付とファイル名を記録に残しておいてください。版の管理については図面のバージョン管理の方法|最新版が分からないを終わらせるにまとめています。

工程2:下図は「貼らずに参照する」

建築図の扱いで、後の手間が大きく変わります。

やり方建築変更が入ったとき
外部参照で読み込む建築ファイルを差し替えるだけで下図が更新される
図形を直接貼り付ける貼り直しが必要。電気側の作図と重なって手戻りになる

建築変更は必ず入ります。外部参照で運用しておけば、変更のたびに発生する作業が「差し替え」だけで済みます。

あわせて、下図は薄い色・専用レイヤに固定し、誤って編集できない状態にしておくと安全です。

工程3:機器配置で決めておくこと

配置を始める前に、次の3つを決めておくと後戻りが減ります。

記号の大きさを縮尺に合わせる

1/100の図面と1/50の図面では、同じ記号でも見え方が変わります。印刷したときに判読できるかが基準です。画面上で見やすくても、A3に出したら潰れるということが起こります。早い段階で一度印刷して確認してください。

取付高さの表記ルールを決める

コンセントやスイッチの取付高さは、図面内で統一した書き方にします。記号のそばに書くのか、凡例でまとめるのか。途中で書き方が変わると、現場で確認の手間が発生します。

回路番号の付け方を決める

盤の系統と平面図の回路番号が対応していないと、現場で追えません。先に採番のルールを決めてから配置するのが手順です。後から振り直すと、平面図と系統図の両方を直すことになります。

工程4:配線の記入で手戻りを防ぐ

配線は「引けば終わり」ではなく、施工できる経路になっているかまでを見ます。

  • ルートに障害物がないか:梁、ダクト、配管との干渉。設備図と重ねて確認する
  • 電線の種類と条数が記入されているか:現場で判断させない
  • 同一回路の負荷が想定内か:後から回路を分けると配線もやり直しになる
  • 幹線の経路が確保されているか:EPSやパイプシャフトの位置を先に押さえる

他設備との干渉は、電気だけを見ていては気づけません。空調・衛生の図面と重ねる工程を必ず入れてください。設備全体をまとめて扱う場合は設備設計に必要な設備CADとは?使いやすいおすすめの製品もご覧ください。

工程5〜6:系統図と拾い出し

系統図は平面図と必ず対応させます。片方だけを直した状態が最も危険で、現場では系統図が正しいものとして結線されます。

拾い出しは、電材データベースを持つ専用CADなら図面から自動で集計できます。汎用CADの場合は手作業になりますが、拾い出し用の属性やレイヤをあらかじめ決めておくと作業を定型化できます。

いずれの場合も、図面が変更されたら拾い出しも更新することをルールにしてください。見積の根拠が古いまま残るのが、金額の食い違いのいちばん多い原因です。

弱電・防災設備を同じ図面で扱うとき

電力配線に加えて、電話・LAN、テレビ共聴、インターホン、自動火災報知設備などを同じ案件で扱うことがあります。ここで図面が読みにくくなる原因は、すべてを1枚に詰め込んでしまうことです。

分け方の基本は次のとおりです。

分け方向く場面
図面を分ける(電力/弱電/防災で別図面)機器の数が多い。担当者が分かれている
レイヤで分ける(1枚の図面内で切り替え)小規模。同じ人が全部を描く

どちらの場合も、防災設備は法令で求められる図書と結びつくため、提出先が求める図面構成を先に確認してください。後から分け直すのは手間が大きい部分です。

改修工事の図面を描くとき

新築と改修では、図面の作り方が変わります。改修では「今どうなっているか」と「どう変えるか」の両方を示す必要があるためです。

既存・撤去・新設を見分けられるようにする

線種や色で区別し、凡例に必ず明記します。現場でいちばん問い合わせが来るのがここです。「この配線は残すのか撤去するのか」が図面から読み取れないと、作業が止まります。

現地調査の結果を図面に反映する

既存図が残っていない、あるいは実際と違っていることは珍しくありません。現地調査で確認した内容は、調査日とあわせて図面内に記録してください。後から食い違いが出たときに、どの時点の情報で描いたかが分かります。

停電できる範囲と時間帯を図面に紐づける

改修では、いつどこを止められるかが施工計画を左右します。回路ごとに停電の可否が分かる形にしておくと、工程の検討が図面上でできます。

工程7:検図で見るべき7点

提出前に機械的に確認できる項目です。チェックリストにして毎回同じ順で見てください。

  1. 平面図と系統図で回路番号が一致しているか
  2. 凡例に載っていない記号を使っていないか
  3. 電線の種類・条数の記入漏れがないか
  4. レイヤが規約どおりか。不要なレイヤが残っていないか
  5. 文字が印刷時に判読できる大きさか
  6. 下図(建築図)が最新版か
  7. 指定形式で書き出して、開き直しても崩れないか

7番目は必ず実施してください。書き出した後に自分で開き直すだけで、形式変換による崩れの大半は事前に見つかります。形式ごとの性格はCADのファイル形式「DXFファイル」とは?CADでの利用方法と対応ソフトを解説で整理しています。

図記号の扱い

日本国内の建築電気設備では、JISで定められた構内電気設備の配線用図記号が基準になります。ただし実務では、元請や設計事務所ごとに独自の記号や凡例が使われることがあります。

そのため、手順としては次のようになります。

  1. 案件の凡例表を受け取る
  2. 自社のテンプレートと突き合わせ、差分だけを追加する
  3. 図面内に凡例表を必ず添える

自社のテンプレートを持っていると、この作業が「差分の追加」だけで済みます。持っていないと毎回ゼロから作ることになるため、最初の案件で作ったものを社内の資産として残すようにしてください。記号そのものの読み方はCADの図面記号の読み方|押さえておきたい基本と使い分けにまとめています。

複数人で描くときのルール

担当者が2人以上になった時点で、次の3つを決めておかないと図面がばらつきます。

決めること決めないと起きること
レイヤ名と色統合時に同じ内容が別レイヤに分かれる
文字の高さとフォント印刷時に見え方が揃わない
テンプレートの置き場所と更新担当各自が自分用のテンプレートを持ち始める

これは製品の機能ではなく運用の問題です。進め方はCADの作図ルールを社内で標準化する手順|6項目と定着策にまとめています。施工側での図面の扱い全般は建設業のCAD選び|施工管理で失敗しない進め方もあわせてご覧ください。

よくある質問

電気図面はどの縮尺で描くのが一般的ですか

建物の規模と図面の種類で変わります。全体の配線経路を示す平面図は1/100や1/200、盤の周辺や機器まわりの詳細図は1/20〜1/50で描くことが多いです。ただし最終的には元請や発注者の指定が優先されます。着手前に図面リストと縮尺の指定を確認してください。

レイヤはどう分ければよいですか

最低限、建築の下図・電力配線・弱電配線・機器記号・文字寸法は分けてください。分けておくと、建築側の変更があったときに電気側だけを残して差し替えられます。元請からレイヤ規約が指定される場合はそれに従います。指定がない場合も、社内で規約を決めて全員が同じ分け方をすることが大切です。

図記号は何を基準にすればよいですか

日本国内の建築電気設備では、JISで定められた構内電気設備の配線用図記号が基準になります。ただし実務では、元請や設計事務所ごとに独自の記号や凡例が使われることもあります。着手前に凡例表を受け取り、それに合わせるのが確実です。自社で凡例を作る場合は、図面内に凡例表を必ず添えてください。

建築図が変更されたとき、電気図面はどう直しますか

建築の下図を外部参照として読み込んでおくと、建築側のファイルが差し替わるだけで下図が更新されます。下図を直接貼り付けていると、変更のたびに貼り直しが必要になります。変更が多い案件ほど、外部参照での運用が効いてきます。

拾い出しはどの段階で行うべきですか

図面がほぼ固まった段階で一度、そして変更が入るたびに更新するのが基本です。電材データベースを持つ専用CADなら図面から自動集計できますが、汎用CADの場合は手作業になります。手作業の場合は、拾い出し用のレイヤや属性をあらかじめ決めておくと、作業が定型化できます。

まとめ

電気図面をCADで作る流れは、条件確認 → 下図の参照 → 機器配置 → 配線 → 系統図 → 拾い出し → 検図の7工程です。

手戻りが起きる原因は、ほとんどが最初の条件確認と、途中でのルールのぶれにあります。縮尺・レイヤ規約・凡例・提出形式・建築図の版。この5つを着手前に押さえておくだけで、後半の作業がかなり軽くなります。

製品選びから検討されている場合は電気CADの選び方|電気工事・電気設備で使うソフトを比較を、他製品との比較はCAD製品データベースをご覧ください。

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