製造業や設計現場では、現在でも2DCADや手書き図面が日常的に使われています。長年培ってきたノウハウや既存データが豊富にあるため、あえて変える必要性を感じていない企業も少なくありません。
しかし、製品のライフサイクルが短くなり、市場の変化に即応するスピードが求められる今、従来の2D図面だけでは設計から製造までの作業をスムーズに進めるのが難しくなってきています。
このような状況で注目されているのが3DCADです。しかし、すぐに全てを移行させるのは現実的ではありません。できる限り2DCADと3DCADを並行して使いながら、業務全体を段階的に再構築していく方法がおすすめになります。
本記事では、2DCADから3DCADへの移行を検討している企業向けに、移行前に知っておきたい情報をまとめましたので参考にしてください。
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2DCADと3DCADの違いとは?

製造業や設計の現場では、「2DCAD」や「3DCAD」といった設計ツールが使われています。
両者はどちらも図面を作るためのツールですが、それぞれできることが異なります。3DCADへの完全移行の前に、両者の違いを知ることが大切なので、次の見出しでは詳しく解説します。
2DCAD
2DCADは、紙に図面を描くのと同じように、平面上に線を引いて形や寸法を表現する設計ツールです。
これまで長く使われてきたこともあり、多くの設計者にとってなじみ深い存在です。また、動作が軽く導入コストも比較的低いため、現在も多くの企業で使われ続けています。
ただし、図面が平面であるため、立体の形状をイメージするには読み手の経験や想像力が必要になります。その結果、設計者と製造現場との間で図面の解釈にズレが生じてしまうこともあり、手戻りやミスが発生しやすいのが課題です。
3DCAD
一方、3DCADは、コンピューター上で製品を立体的に設計できるツールです。
画面上で実物に近い形を作れるため、部品の形や組み立て方がひと目でわかります。誰が見ても同じ形をイメージできるため、図面の読み間違いや伝達ミスを防ぐことができます。
また、3Dモデルをもとに自動で2D図面を作成できたり、動きのシミュレーションや干渉チェックなどの機能と連携できたりするのも特徴です。製造現場だけでなく、営業や設計以外の部署とも共通のイメージを持てるため、社内外の情報共有がスムーズになる特徴も持っています。
2Dと3Dの並行運用が必要な理由

2DCADと3DCADには違いがあり、どちらにも良さがあります。どちらか一方に絞ることができない場合は、できる限り2DCADと3DCADの並行運用がおすすめです。
なぜ並行運用がおすすめなのかについて詳しく紹介するので参考にしてください。
完全な3D移行はハードルが高い
3DCADには多くのメリットがありますが、導入にあたっては大きな課題も伴います。まず、システム導入の初期費用が高く、高性能なPC環境の整備も必要です。加えて、操作に慣れるまでに時間がかかるため、社員教育やトレーニングのコストも無視できません。
また、外部のサプライヤーが2DCADにしか対応していないケースも多く、自社だけが3DCADに切り替えても、データの受け渡しに支障が出てしまう可能性があります。
そのため、3DCADに完全移行するのは、かえって非効率になるリスクもあるのです。しかし、並行して使用すればどちらのデメリットも補うことができるため、スムーズに作業を進めることができます。
手書き図面や古い2D資産も活かせる
製造業の多くの現場には、現在でも手書きの図面や古い2DCADデータが大量に残っているのが実情です。これらのデータは、古くても貴重な設計ノウハウの集積であり、3DCADに移行後、全てを削除することはできない企業が多いでしょう。
並行運用であれば、過去の2D図面を活かしながら、必要な部分から順次3Dモデルに置き換えていくことができます。また、図面をスキャンして背景に表示しながら3Dモデリングを進めるなど、既存資産をベースにした効率的な運用も可能になります。
徐々に3D化することで移行の混乱を抑えられる
設計業務の全体をいきなり3Dに置き換えてしまうと、現場では大きな混乱が起きる恐れがあります。特に、3DCADを扱ったことがないベテラン設計者が多い職場では、ツールが変わることで仕事のやり方そのものが変わってしまうことに強い抵抗感を抱く設計者が多くなるでしょう。
その点、並行で運用すれば、新製品や一部の小規模な案件から3DCADを導入し、社内に成功事例をつくっていくことで、無理なく浸透させていくことができます。また、並行運用によって、「慣れた2Dで素早く描き、3Dで最終チェックや共有を行う」といった柔軟な使い方も可能になり、業務全体の効率化にもつながります。
3DCADは現在では必要不可欠となり、慣れてしまえば2DCADに比べて多くのメリットがあります。しかし、いきなり全てを移行させるのは混乱を招くケースも多いので注意しましょう。
3DCADの導入がもたらす業務改革

CADには2Dと3Dがあり、どちらにもメリットがあります。慣れるまでは並行運用がおすすめですが、やはり3DCADには従来にはない多くのメリットが得られます。
ここでは3DCADの導入がもたらす業務改革について3つ紹介するので、「なかなか3DCADの導入に踏み切れない」と悩んでいる企業は、ぜひ参考にしてください。
情報共有の効率化
3DCADでは、立体的なモデルを使って設計を進めるため、設計者の意図がより明確に伝わります。2D図面では、読み手の経験や解釈に頼らなければならず、部門間や外注先との意思疎通に時間がかかることも珍しくありません。
しかし、3Dモデルであれば、例えば営業担当が顧客に製品の完成イメージを説明したり、製造部門が組立方法を事前に確認したりすることが、視覚的・直感的に行えます。結果として、ミスや手戻りが減り、社内外でのやり取りがスムーズに進むようになります。
リードタイムの短縮
製品開発におけるリードタイムとは、設計から製造・納品までにかかる一連の時間のことです。3DCADを導入することで、このリードタイムを大きく短縮することが可能になります。
例えば、3Dモデルを使えば設計段階で部品の干渉チェックができるため、試作品を作ってから不具合に気づくというリスクを減らせます。また、必要に応じてシミュレーションを行うことで、強度や動作もあらかじめ検証できます。これにより、設計、試作、修正というサイクルが効率化され、製品化までのスピードが加速します。
2DCADでは難しい部分でも、3DCADなら実現することができ、効率よく製品を生産できるようになるのは大きなメリットと言えるでしょう。
製品の市場投入スピード向上
市場ニーズの移り変わりが激しい現代では、「いかに早く製品をリリースできるか」が競争力の鍵となります。3DCADを活用することで、開発スピードが上がり、市場投入までの時間を大幅に短縮できます。
例えば、顧客からの要望を受けて設計変更が必要になった場合、3Dモデルであればすぐに変更点を反映し、関係者全員で確認することができます。営業やクライアントとの合意形成も、完成イメージを3Dで共有することで迅速に行えるため、商談や開発スケジュールの決定もスムーズになります。
このように、3DCADなら立体的に表現できるため、設計者でなくても製品の完成形をイメージしやすくなります。2DCADでは難しいため、製品の市場投入スピードを上げたいなら、3DCADが必要不可欠となるでしょう。
3DCADの導入にあたっての注意点と進め方

3DCADの導入は、単なるツールの変更ではなく、設計業務そのもの、さらには関連する部門との連携や情報の流れを見直すきっかけとなります。
しかし、やみくもに導入を進めてしまうと、社内に混乱を招いたり、うまく活用できずに定着しなかったりする事態にもなりかねません。
ここでは、3DCAD導入をスムーズに進めるための注意点と実践的な進め方について解説します。
2D運用の現状を棚卸しする
最初に行うべきこととしては、自社で現在どのように2DCADを運用しているかを正確に把握することです。
例えば、どの部門が2Dで設計しているのか、外部との図面のやりとりに使っているのはどのフォーマットか、古い手書き図面がどれほど残っているかなど、情報を整理することが重要です。
この棚卸しによって、どの業務を3Dに切り替えるべきか、逆に2Dのままで十分な業務はどれかが見えてきます。すべてを一度に3D化するのではなく、業務の内容や優先度を見極めて段階的に移行できる土台づくりが大切です。
スモールスタートを意識する
3DCADの導入は、スモールスタートで進めていくことが大切と言われています。例えば、1つの製品ラインや特定のプロジェクトで試験的に導入し、成果や課題を明確にしてから全体に展開していくのが現実的です。
小さな成功体験を積み上げることで、社内の理解や協力も得やすくなり、導入への抵抗感も少なくなります。
また、初期段階で発見された課題は、次の導入フェーズで改善に活かすことができ、全社的な定着に向けた準備として非常に有効です。
教育・マニュアルの整備を忘れずに
3DCADは高機能な反面、操作方法に慣れるまでに時間がかかる傾向があります。そのため、導入と同時に社内研修や操作マニュアルの整備をしっかり行うことが必要です。
特に、ベテラン設計者にとっては慣れた2Dからの切り替えに不安を感じることもあるため、段階的なスキル習得の場を設けると効果的です。
また、ソフトの操作だけでなく、「3Dデータをどのように社内外で活用するか」「どの場面で2Dと3Dを使い分けるのか」といった運用ルールを定めておくと、社内での混乱を防ぎ、スムーズな業務遂行につなげることができるでしょう。
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まとめ
2DCADは現在も多くの現場で使われていますが、変化の激しい時代に対応するには3DCADの導入が有効です。しかし、いきなりすべてを切り替えるのは難しいため、まずは2Dと3Dの並行運用から始めるのがおすすめです。
本記事で紹介したように、現状の把握、スモールスタート、教育体制の整備を行えば、無理なく3DCADを導入することができます。段階的に進めることで、業務全体の効率化と競争力強化につながっていくでしょう。
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