高度なシミュレーション機能を備えたCADにはどんなメリットがあるの?

  • 2025年6月26日
  • 2025年6月25日
  • コラム

製造業や建築、土木など、さまざまな業界で欠かせない存在となっているCADですが、近年では単に図面を描くだけでなく、設計した部品や構造物の動きや強度を事前にチェックできるシミュレーション機能を備えたCADソフトが注目されています。

例えば、部品にどれくらいの力がかかると壊れるのか、熱を加えるとどう変形するのかといったことを、試作を作らずコンピューター上で確認できるのがシミュレーション機能の大きな特徴です。

本記事では、そもそもシミュレーション機能付きのCADとは何かを解説したうえで、代表的なCADソフトであるAutoCAD、SOLIDWORKS、CATIAの特徴をわかりやすく紹介します。さらに、シミュレーション機能を活用することの具体的なメリットについても解説しますので、これからCADを導入しようと考えている方や、設計の効率化を図りたい方はぜひ参考にしてください。


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シミュレーション機能付きCADとは?

シミュレーション機能付きCAD

CADは、パソコン上で図面や3Dモデルを作成するためのソフトです。以前は紙に手書きで行っていた製図作業を、デジタルで効率よく行えるようにしたのがCADの役割です。

しかし、近年のCADソフトは、ただ形を作るだけではなく、その形が「どう動くか」「どこに負荷がかかるか」「壊れやすい場所はどこか」といった、現実世界に近い情報を確認できるシミュレーション機能が使えるようになっているソフトが増えています。

例えば、ある部品に力を加えたときに「どこが曲がりやすいか」や、温度が高くなったときに「どの部分が膨らむか」などを、パソコン上であらかじめ調べることができます。これによって、実際に製品を作って壊してみるといった面倒な作業をしなくてもよくなり、開発のスピードを格段に上げることが可能になります。

このような特徴から、現在ではシミュレーション機能がなくてはならない存在となっています。今後のCADに必要不可欠なものとなるため、導入を検討している方は、シミュレーション機能の有無も確認することをおすすめします。

シミュレーション機能を備えたCADソフト3選

シミュレーション機能が備わっているCADソフトを導入することで、さまざまな作業を効率的に進めることができますが、どのようなCADソフトにも備わっている機能かというとそうではありません。

この見出しでは、シミュレーション機能を備えたCADソフトの中でも、代表的な製品を3つ紹介します。製品選びで悩んでいる方は、概要を参考にしながら導入するか検討してください。

AutoCAD

AutoCAD

公式サイト:AutoCAD

AutoCADは、CAD業界では知らない人がいないほど有名なソフトで、世界中で利用されている実績のある製品です。開発元はAutodesk(オートデスク)社で、日本国内でも建築・インテリア・土木・設備設計など、幅広い分野で導入されています。

AutoCADは2D製図と3Dモデリングの両方に対応しており、特に2D図面をきれいに仕上げる作業に強みがあります。図面の作成・編集・寸法の管理といった基本機能が充実しており、CAD初心者の方でも比較的スムーズに操作を覚えられる点が魅力です。

ただし、AutoCADそのものには高度なシミュレーション機能は搭載されていません。その代わり、同じAutodesk社が提供する「Fusion 360」や「Inventor」といったソフトと組み合わせることで、強度解析、応力解析、モーションシミュレーションなどの本格的なシミュレーションが可能になります。

例えば、Fusion 360ではクラウドベースでのシミュレーションが行え、負荷に対する変形の様子をリアルタイムで確認することができます。Inventorを使えば、より複雑な構造物の動きや熱影響、振動といった要素も考慮したシミュレーションが可能です。

AutoCADは単体で見るとシンプルなCADソフトですが、他のAutodesk製品との連携がしやすいため、設計から検証まで一貫して進めたいというニーズにも柔軟に対応できるのが特徴となっています。

SOLIDWORKS

SOLIDWORKS

公式サイト:SOLIDWORKS

SOLIDWORKSは、主に機械設計や製品開発の分野で高い評価を得ている3D CADソフトです。設計からシミュレーション、製造まで一つのプラットフォーム上で統合的に進められることが大きな特徴です。

このソフトの最大の強みは、3Dモデリングとシミュレーション機能が一体となっており、設計を進めながら動作確認や強度のチェックができる点にあります。SOLIDWORKS Simulationという追加機能を使えば、以下のような多彩なシミュレーションが可能です。

  • 静的構造解析(力をかけたときの変形や壊れやすい箇所のチェック)
  • 熱解析(温度変化による影響の確認)
  • 振動解析(繰り返しの力が加わった場合の反応)
  • モーション解析(部品が連動して動く様子の再現)
  • 疲労解析(長期間使用した場合の耐久性)

例えば、ある製品のねじ部分に力が集中していないか、部品が動いたときに干渉しないか、といったことをあらかじめ確認できるため、後からの修正を減らすことができます。

また、SOLIDWORKSは使いやすさにも定評があり、アイコンベースの直感的な操作が可能です。チュートリアルや日本語マニュアルも豊富に用意されているため、CAD未経験者でも無理なく学習できます。

SOLIDWORKSは、製造業でよく使われており、中小企業から大手メーカーまで幅広い導入実績があります。設計と検証を効率的に進めたい方は、SOLIDWORKSがバランスの良いソフトと言えます。

CATIA

CATIA

公式サイト:CATIA

CATIA(キャティア)は、フランスのDassault Systèmes(ダッソー・システムズ)社が開発した、世界でもトップクラスのハイエンドCADソフトです。航空機や自動車といった大規模かつ高精度な製品設計に対応しており、トヨタやエアバスといった世界的企業にも採用されています。

CATIAは「CAD(設計)・CAM(製造)・CAE(解析)」のすべてを一つのプラットフォーム上で実行できる点が最大の強みです。特に解析機能(CAE)では、高度なシミュレーションに対応しており、下記の幅広い解析に対応しています。

  • 構造解析(衝撃や力のかかり方)
  • 熱伝導の解析(温度の影響)
  • 流体解析(CFD)(空気や水の流れ)
  • マルチボディ解析(複数の部品が連動する複雑な動きの再現)
  • マルチフィジックス解析(上記すべてを同時に計算)

このような複雑なシミュレーションを行うことで、実物を作らずに製品の性能や問題点を予測でき、製造前のトラブルを大幅に減らすことができます。

また、CATIAは非常に大規模な設計にも対応しており、数百点以上の部品が連動する自動車や航空機のようなアセンブリ設計にも強いです。ただし、非常に高機能な反面、導入コストも高めであり、操作にも専門的な知識が求められるため、企業向けのソリューションと言えるでしょう。

そのため、CATIAを導入する場合は、専門スタッフの育成や、専任の設計チームを用意する必要があります。


IT導入補助金を活用してCADを導入する方法に関しまして、以下で解説しておりますので、よろしければご覧ください。

シミュレーション機能を活用することのメリット

シミュレーション機能 メリット

CADにシミュレーション機能が備わっていると、設計や製造の現場でどのような利点があるのでしょうか。この見出しでは、主な4つのメリットをご紹介します。

試作コストの削減

従来は、設計した部品を一度実物で試作し、その結果をもとに修正を加える流れが一般的でした。しかし、シミュレーション機能を使えば、パソコン上で事前に問題点を洗い出せるため、試作品の数を減らすことができます。

これにより、材料費や加工費、人件費などのコストを大幅に削減できます。さらに、試作のたびに発生する設備の再調整や部品発注の手間も省けるため、全体の工数削減にもつながります。結果として、開発予算をより効率的に使うことができ、他の開発に資金を回す余裕も生まれます。

開発スピードの向上

シミュレーション機能を活用することで、設計と検証を並行して行えるため、開発のスピードが格段に速くなるメリットがあります。

特に、製品開発の初期段階で多くの案を試すことができるため、より早く最適な形にたどり着くことが可能になります。また、設計の変更点がすぐに反映され、即座に効果を確認できるため、無駄な待ち時間がありません。

短期間でPDCAサイクルを回せることは、競争が激しい市場において大きな強みとなります。

製品品質の向上

シミュレーション機能を使えば、部品にどんな力がかかるのか、どこが動くのかなどを、あらかじめパソコン上で確認できます。製品を作る前からシミュレーションできれば、実際に製品を作ったときに「壊れやすい」「うまく動かない」といったトラブルを防ぐことができます。

問題を早めに見つけて直せるので、よりしっかりとした製品をつくることができ、使う人にも安心してもらえます。トラブルが少なければ、お客様からの問い合わせやクレームも減り、信頼される製品として長く使ってもらえるようになります。

似たような製品を後から作るときにも、同じ品質を保ちやすくなるなど、製品品質の向上においてシミュレーション機能は幅広いメリットがあります。

チーム内での共有・可視化がしやすい

シミュレーションの結果を可視化できることで、設計者だけでなく、開発チーム全体で設計意図を共有しやすくなります。

例えば、営業担当や上層部に対しても、3Dモデルとシミュレーション結果を使って「どのような動きをするのか」「どの部分が改善点なのか」を視覚的に伝えられるため、コミュニケーションの効率も上がります。

特にプロジェクトの初期段階では、視覚情報が多いほどチームメンバーの意見が揃いやすくなり、設計ミスの予防にもつながるため、シミュレーション機能は設計において必要不可欠なものと言えます。

まとめ

シミュレーション機能が備わっているCADソフトを導入すれば、「どのように動くか」「どこに負荷がかかるか」などを事前に確認でき、試作の手間やコストを減らし、開発スピードを上げるだけでなく、製品の品質向上にも大きく貢献します。

本記事で紹介したAutoCAD、SOLIDWORKS、CATIAはいずれもシミュレーション機能に対応しており、それぞれ用途や目的に応じて選ぶことができます。初めてCADを導入する方や、これからより効率的な設計・開発を目指したい方は、ぜひシミュレーション機能の有無や操作性、導入しやすさなどを比較して、自社に合ったソフトを選んでみてください。

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