建築でCADを選ぶとき、機能一覧を並べても答えは出ません。同じ「建築CAD」でも、意匠設計で使うものと、構造計算に使うもの、設備の施工図に使うものは別物だからです。まず自社がどの図面を社内で描いているのかを決めないと、比較が始まりません。
この記事では、建築分野で使われるCADを意匠・構造・設備・外構の用途別に整理し、主要製品を一覧で比較します。そのうえで、価格と、補助金を使った場合に実際いくら残るかまでを示します。
学生・これから学ぶ方向けの選び方は建築学生におすすめのCADソフト|選び方と押さえるべき点にまとめています。この記事は実務で使う会社が買う前提で書いています。
結論:先に決めるのは製品ではなく「4つの条件」
製品名から入ると必ず迷います。次の4つを先に埋めてください。ここが決まれば候補は2〜3本に絞れます。
| 決めること | 選択肢 | 効いてくるところ |
|---|---|---|
| ① 用途 | 意匠/構造/設備/外構・造園 | 専用CADが要るかどうか |
| ② 次元 | 2Dのみ/3D/BIM | 価格が一段変わる |
| ③ やり取りする形式 | DWG・DXF/JWW/IFC/SXF | 取引先に合わせる必要がある |
| ④ ライセンス形態 | 買切り/サブスクリプション | 総額と、補助対象経費の計算が変わる |
とくに③は自社の都合で決められません。元請や協力会社から受け取る図面の形式が、選べる範囲を決めます。直近1年で受け取った図面の拡張子を数えるのが、いちばん確実な出発点です。
建築CADの分類:まず「何を描くか」で分かれる
意匠設計向け
平面・立面・断面、パース、プレゼン資料までを扱う領域です。図面の正確さと同じくらい、見せ方の表現力が求められます。3D化とレンダリングの質が製品選びに効いてきます。
構造設計向け
構造計算ソフトとの連携が前提になる領域です。CAD単体で選ぶというより、使っている構造計算ソフトが何とつながるかで決まることが多く、選択の自由度は意匠より低くなります。
設備設計・施工図向け
空調・給排水衛生・電気設備の図面を扱います。ダクトや配管を部材として持ち、干渉チェックや数量拾いができるかが分かれ目です。詳しくは設備設計に必要な設備CADとは?使いやすいおすすめの製品をご覧ください。
外構・造園向け
敷地全体の計画、植栽、舗装、フェンスなどを扱います。施主へのプレゼンが受注に直結するため、3Dパースの手軽さが重視されます。外構CADのおすすめ3選|メリットと補助金を使った導入方法で詳しく扱っています。
もう一つの軸:2D・3D・BIMの違い
建築CADの価格帯を決めているのは、実はこの軸です。
| 区分 | 持っている情報 | 向く場面 | 価格帯の目安 |
|---|---|---|---|
| 2D CAD | 線・寸法・文字 | 施工図、改修、既存図の修正 | 無料〜十数万円 |
| 3D CAD | 形状 | 意匠検討、パース、干渉確認 | 十数万円〜数十万円 |
| BIM | 形状+部材の属性情報(材質・数量・仕様) | 積算、施工計画、維持管理までの一貫運用 | 数十万円〜百万円台 |
BIMは「3Dの高級版」ではありません。モデルに部材の情報が入っていることが本質で、そこから数量を拾えることが価値になります。違いは3DCADとBIMは何が違うか|設計対象と情報の持ち方で整理しています。2Dと3Dの使い分けは2DCADと3DCADの違い|機能と、使い分けの判断基準をご覧ください。
主要な建築CADの比較一覧
建築分野で名前が挙がる製品を一覧にします。「当社での補助金対応」欄は、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)で当社が取り扱えるかどうかを示しています。
| 製品 | 区分 | 主な用途 | 形態 | 当社での補助金対応 |
|---|---|---|---|---|
| AutoCAD | 2D/3D 汎用 | 意匠・設備・施工図全般。DWGの標準 | サブスク | 取扱いあり |
| Vectorworks Fundamentals | 2D/3D | 意匠設計、プレゼン | 買切り | 取扱いあり |
| Vectorworks Architect | BIM | 意匠設計+BIM運用 | 買切り | 取扱いあり |
| Vectorworks DesignSuite | BIM | 建築・内装・ランドスケープを網羅 | 買切り | 取扱いあり |
| AEC Collection | BIM 一式 | Revit・Civil 3D・AutoCADなどを一括 | サブスク | 取扱いあり |
| SketchUp Pro | 3D | ボリューム検討、外構、内装プレゼン | サブスク | 取扱いあり |
| Rhino 8 | 3D | 自由曲面、意匠検討、ファサード | 買切り | 取扱いあり |
| ARCHICAD | BIM | 意匠設計のBIM運用 | サブスク/買切り | ご相談ください |
| GLOOBE | BIM | 日本の法規・確認申請に対応 | 買切り | ご相談ください |
| ARCHITREND ZERO | 3D 専用 | 木造住宅の設計・プレゼン | 買切り | ご相談ください |
| DRA-CAD | 2D/3D 専用 | 意匠・確認申請図書 | 買切り | ご相談ください |
| TurboCAD | 2D/3D 汎用 | 低価格帯の汎用CAD。日本語版は2024年9月で販売終了 | 買切り | ご相談ください |
| Jw_cad | 2D 専用 | 施工図、改修図。国内で普及 | 無料 | 対象外(無償のため) |
Vectorworksについて:メーカーのベクターワークスジャパン(旧:エーアンドエー)は、スタンドアロン版の永続ライセンスの販売を2026年末で終了すると発表しています(2026年4月15日発表)。2027年以降は、サブスクリプション(年間・月間)またはネットワーク版の永続ライセンスでの提供になります。買い切りでの購入をご検討の場合は、時期にご注意ください。
ここに挙げた以外の製品も含めて絞り込みたい場合は、CAD製品データベース(53製品)をご利用ください。用途・区分・対応OS・対応形式で絞り込め、当社での補助金の取扱い状況も一覧で確認できます。
「ご相談ください」は、補助金が使えないという意味ではありません。当社はIT導入支援事業者ですので、ご相談をいただいてから対象ITツールとしての登録を進めることもできます。導入したい製品が決まっている場合は、その製品名をお知らせいただければ登録状況と見込みをご案内します。
製品ごとの詳しい解説はVectorworks、SketchUpのページもあわせてご覧ください。
用途から製品を絞る早見表
| あなたの状況 | まず見る製品 | 理由 |
|---|---|---|
| 施工図中心。取引先はJw_cadとDWGが混在 | AutoCAD | DWGの原本を扱え、DXF経由でJWWとも行き来しやすい |
| 意匠設計。プレゼンの質を上げたい | Vectorworks Fundamentals/SketchUp Pro | 3D表現とプレゼン資料の作成が速い |
| BIMでの提出を求められ始めた | Vectorworks Architect/AEC Collection | IFC対応と属性情報の運用ができる |
| 意匠から積算・施工計画まで一貫させたい | AEC Collection/Vectorworks DesignSuite | 複数業務にまたがるため補助金の4プロセス要件も満たしやすい |
| 木造住宅が中心で確認申請まで扱う | ARCHITREND ZERO/GLOOBE | 国内法規・申請図書への対応が作り込まれている |
| 外構・エクステリアの提案が主 | SketchUp Pro | 短時間でパースを作れる。植栽・舗装の素材が豊富 |
| 自由曲面・複雑形状を扱う | Rhino 8 | NURBSベースで、他のCADでは表現しにくい形状に強い |
建築CADは高額。補助金で導入費用をどこまで下げられるか
BIM対応の建築CADは、1ライセンス数十万円から百万円台になります。中小の設計事務所や工務店にとっては簡単な金額ではありません。
ここで使えるのがデジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)です。通常枠では、ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)・導入関連費が補助対象となり、補助率は原則1/2、補助額は下限5万円・上限450万円です。
注意点が3つあります。
- 対象は事務局に登録されたITツールに限られます。市販の建築CADが自動的に対象になるわけではありません。
- 通常枠ではハードウェアは原則対象外です。CAD用のPCは別予算で考えてください。必要なスペックはCADを使うのに必要なPCのスペックは?推奨スペックを解説にまとめています。
- 交付決定前の発注・契約・支払いは対象外です。「先に買ってから申請」はできません。
BIMに絞った補助金の使い方はBIM導入に補助金は使えるか|対象条件と自己負担額で詳しく扱っています。
建築で使うCADの自己負担額(通常枠で試算)
当社が取り扱う登録済みITツールの標準販売価格(税抜・1ライセンス)をもとに、通常枠・補助率1/2で計算した概算です。
| 製品 | 標準販売価格 | 補助対象経費 サブスクは2年分 | 補助額 | 自己負担 |
|---|---|---|---|---|
| AutoCAD サブスクリプション | 71,500円 | 143,000円 | 71,500円 | 71,500円 |
| SketchUp Pro サブスクリプション | 85,830円 | 171,660円 | 85,830円 | 85,830円 |
| Rhino 8 商用版 買切り | 187,000円 | 187,000円 | 93,500円 | 93,500円 |
| Vectorworks Fundamentals 2026 買切り | 393,800円 | 393,800円 | 196,900円 | 196,900円 |
| Vectorworks Architect 2025 買切り | 523,600円 | 523,600円 | 261,800円 | 261,800円 |
| AEC Collection サブスクリプション | 578,600円 | 1,157,200円 | 578,600円 | 578,600円 |
| Vectorworks DesignSuite 2025 買切り | 676,500円 | 676,500円 | 338,250円 | 338,250円 |
いずれも補助額が5万円以上のため、この製品単体でも通常枠に申請できます。
サブスクリプションは2年分で計算しています。クラウド利用料・サブスクリプション費用は最大2年分が補助対象になるため、1年分で申請するより補助額が大きくなります。AutoCADのように年額が比較的低い製品でも、2年分にすることで補助額の下限5万円を確実に超えられます。
買切りライセンスは購入額がそのまま補助対象経費です。年数の概念がないため2年分にはできません。「年額×2年」と「買切り価格」を並べて比べてください。
補助率は通常枠の原則1/2、補助額の下限は5万円、上限は450万円で計算しています。サブスクリプションはクラウド利用料として最大2年分が補助対象になるため2年分で試算しています。価格は2026年9月時点の標準販売価格(税抜)です。実際のご提案価格は構成・数量によって変わります。
補助率は通常枠の原則1/2、補助額の下限は5万円、上限は450万円で計算しています。価格は2026年9月時点の標準販売価格(税抜)です。実際のご提案価格は構成・数量によって変わります。